90年代を思い返すと、まるで有難いお経を聞くかのように畏まって、真剣に音楽を聴いている私がいた。
「あの頃はよかったよね。」
30を過ぎたあたりから、なんとなくそんな言葉が口をついて出るようになった。
私はそれが、本当に嫌だった。
私は小さなころから音楽を聴くのが好きだった。
小学生の頃は母の影響でThe Beatlesを。
中学生の頃にはハードロックを聴き始め、そのうち音楽好きの友人の影響でOASISやblurに熱狂し、BECKやKula Shakerなどに出会い、憑りつかれた様にCDを集めたものだ。(今から考えるとかなりミーハーか?)
そんな私も、ちょうど20歳を過ぎた頃からは段々と、新しい音楽を探そうとする熱が冷め始めたと思う。
今、私は39歳。
この歳になって、ギターを始めた。
相変わらず、音楽が大好きだ。
しかしやはり、「あの頃はよかったよね。」という思いが何処かにある。
こんな大人になりたくないと思っていた大人になっちまった。
何故、90年代というのはこんなにも「よかった」のだろう。
分からない。
思い返すと、あの頃の私は新しいCDを手に入れる度、本当にドキドキしながらコンポのトレイにCDをセットして、今度はどんな挑戦状を私にたたきつけてくれるのだろうかと興奮して再生ボタンを押していた。
歌詞カードを開いて、本当に改まった気持ちで、どんな些細な音も聴き逃すまいと真剣だったと思う。
それこそ、まるで有難いお経を聞くかのように畏まって、真剣に音楽を聴いている私がいたのだった。
ここまで書いてきて、ふと不思議に思った。
何故、20歳を過ぎた頃からは音楽への熱が失われていったのだろう…。
単純に「歳をとった」というやつなのだろうか。
それこそ、「あの頃はよかったよね。」という言葉に集約されているのかもしれない。