こっちmiruna!

miruno...? NO!miruna!!

真夜中の竹の塚で写真を撮る

真夜中の竹の塚にて

空気がびりびりと震えるようになると、冬の訪れを感じる。
(もう、冬か…。)
耳朶までびりびり痛くなるような冷たい夜、私は思わず溜息をついた。
マスクのせいで、眼鏡がふあぁと曇る。
真夜中の竹の塚で、私はiPhoneを握りしめていたのだった。

 

冬の訪れと不眠症、そして竹の塚

今年も、冬の訪れとともに無事(?)不眠症になった。
例年ならば、うだうだと布団に潜って音楽を聴いて朝を迎えるのだが、今年の私はちょっと違う。
いや、一味も二味も違う。
何故ならば、写真という趣味があるからだ…!

 

いつもなら、いくら写真を撮るのが好きとはいえ、真夜中にわざわざ写真を撮りに出掛けることはない。
しかし、この冬の私は二味は違う。
わざわざ自転車を漕ぎに漕いで愛しの竹の塚まで行ってしまうわけである。

 

以前にも少し話したかも知れないが、私は竹の塚という街が何故だか好きだ。
特に、あの団地の群れゞを眺めるのは堪らない。
階段を下から見上げてみたり、壁に入ったヒビを見つめたりしていると、段々自分と世界の境界線が無くなってくるのだ。
それが、怖くもあり、落ち着くような気もする。
世界との境界線がなくなる体験が、しらふで出来る街。

最高。

そんなことを考えながら、竹の塚へ自転車を走らせる。
いつもの自転車置き場に着き時計を見ると、時刻は午前0時を過ぎていたのだった。

50枚写真を撮っても、気に入るのはほんの数枚

さて、ぶらぶらと駅周辺を歩く。
さすがに真夜中の竹の塚で暗がりを歩くのは勇気がいる。
(いやあほら、私は団地が好きだから…)
なぞと言い訳をしながら、団地を写真に収めていく。

 

そうそう、昨夜は50枚程写真を撮ったのだけれど、それだけ撮ってもあとで見返すと殆どが面白くない写真だ。
もう少しブログに載せられる写真があるかと思ったけど、ほんの数枚だけだった。
悲しい。

 

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これが最初の一枚目の写真。
母に送って感想を聞くと、
「なんで団地を撮ってるのに建物全体を写さないの?」
と言われた。
私もそれはそうだと思うけど、建物全体を撮るにはiPhoneは画角が狭いと思うし、あまりそういう写真を撮りたいとは思わない。
不思議な物体や、汚いごみ箱、階段、狭い路地裏、そいういうものを撮るのが好きだ。
この写真もこの不思議な金属が気になって撮ったのだけど、この撮り方をするなら縦長の写真にして上まで奥行きを作ればよかったな、とふと思ったり。

 

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これは、先程の写真の不思議な金属の向こう側を覗いて撮ってみたもの。
なんだか写真のフレームみたいで面白い。
こういうチャレンジは好き。

 

次の写真は、商店街にある公園のブランコ。
こうして見ていると、やはり竹の塚は東京っぽさがない。
すぐ隣が草加市だから、なんとなく竹の塚も空気感が埼玉に似ているのだろうか。
私自身が埼玉生まれ、埼玉育ちなので、竹の塚のそういう部分もなんとなく親近感を感じるのかもしれない。

 

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商店街を抜けて西新井方面へ、ずんずん、ずんずんと歩いていく。


(電灯が煌々と明るいとはいえ、なんだか怖いな…)
実はかなりのビビりな私は、暗がりの街並みに少しずつ不安になっていった。


(木の陰から誰か出てくるんじゃないか…)
そんな(勝手な)恐怖心まで芽生える始末。
ビビりすぎ。

 

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街並みを写真に収めていると、ふと「ある言葉」が浮かんだ。

(真夜中の白黒写真は駄目だ…)
(駄目…無理!)

急にパニックになる私。
猛烈ダッシュして商店街の方へ戻る。

 

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息をきらして戻ってくると、美しい椿を、見つけた。

 

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灯りに照らされた椿を見て心底ホッとしたのも束の間、急いで自転車置き場へ向かう。
自転車置き場には、私の自転車だけが停めてあった。
一度だけ大きく深呼吸して、それから、自転車の鍵を外す。

「早く帰って寝よう。」

私はなんとなく声に出して呟き、自転車を走らせ始めたのだった。