赤城山が遠くに見える小さな町で。
埼玉県にある、赤城山が遠くに見える小さな町で、私は生まれ育った。
かつての私にとって、その町は世界の全てだった。
私は、あの町が嫌で嫌で仕方なかった。
私の家族も、町の人々も、そして私自身さえもが「異常」だったからだ。
―――この「異常」な町から抜け出せたなら。―――
毎日そんな事を考えていた私は、10代の終わり頃にとうとう町を抜け出すことに成功し、今は東京の片隅で、猫と一緒に一人と一匹暮らしをしている。
今夜は、窓から見える月を眺めながらぼぉっと考え事をしていた。
これまでの人生と、これからの人生について。
あの町であった「異常」な出来事や、「異常」な人々について。
私の頭をがつんと殴りつけるような、優しい音楽について。
そして、私に出会ってくれた大切な友人について。
「ふぅ。」
自然と溜息が零れた。
時計の針は、21時51分を指している。
今日の一枚。
埼玉県熊谷市の駅前周辺を散歩した時のもの。
この寂れた感じが好きだ。